石川県を襲った記録的な豪雨が、県内の農業に大きな被害をもたらしています。
特に深刻な状況となっているのが、邑知潟(おうちがた)周辺に広がる羽咋市の田んぼです。
稲刈りを目前に控えた田んぼが広範囲にわたって浸水し、場所によっては稲穂がまったく見えないほど水位が上昇。
早生品種「ゆめみづほ」の収穫が始まったばかりの時期を襲った豪雨に、地元のコメ農家からは戸惑いと悲痛な声が上がっています。
さらに、約30ヘクタールの田んぼで米を栽培する農家では、およそ3分の1が浸水し、被害額が1,200万円以上に上るとみられています。
被害を受けた中には、2026年に本州で初めてトキが放鳥された羽咋市で、トキとの共生を目指して栽培されている「トキ認証米」も含まれています。
しかも農家を襲ったのは豪雨だけではありません。
落雷によって収穫後の米に欠かせない乾燥機も使用できなくなるなど、深刻な状況が続いています。
当記事では、石川県の記録的豪雨によって羽咋市の田んぼで発生した浸水被害やコメ農家への影響、トキ認証米の被害、落雷による乾燥機の故障などについて整理します。
石川県の記録的豪雨で羽咋市の田んぼが浸水
石川県内を襲った記録的豪雨により、羽咋市では田んぼや農道が広範囲にわたって冠水しました。
特に大きな被害が確認されているのが、邑知潟周辺です。
邑知潟の北側に位置する羽咋市千路町と鹿島路町では、28日になってからも冠水した田んぼや農道の水位がさらに上昇しました。
報道によると、田んぼは稲穂が見えないほど水につかり、まるで湖のような状態になっていたとのこと。
周辺では前日からの水位上昇が50~60センチほどに達したとされ、通常の田園風景とは大きく異なる光景が広がりました。
近くでコメ農家を営む長瀬明さんによると、この地域は元々水がたまりやすい地形です。
そこへ27日の大雨によって山や用水から大量の雨水が流れ込み、浸水被害が一気に拡大したとみられます。
長瀬さんは、26日までは歩くことができた場所が、人も車も立ち入りにくい状態になったとして、わずか数日で景色が一変したことへの戸惑いを語っています。
28日午前には排水ポンプが取り付けられ、排水作業が進められることになりました。
しかし、水が引けば全て元通りになるとは限りません。
収穫直前の稲への影響がどこまで広がるのか、農家にとって予断を許さない状況です。

稲刈り目前のコメ農家を豪雨が直撃
今回の石川県の記録的豪雨が農家にとって特に大きな打撃となった理由の1つが、その「時期」です。
羽咋市周辺では、早生品種の稲刈りが始まったばかりでした。
報道では、近くの農家から「ゆめみづほ」の収穫が始まったところだったと紹介されています。
春から手間と時間をかけて育て、ようやく収穫を迎えようとしていた矢先の豪雨でした。
稲刈り前の田んぼが冠水してしまえば、予定通り収穫することが難しくなります。
さらに、稲穂まで水につかった場合には泥が付着する可能性があるほか、田んぼに流木や瓦礫などが流れ込めば、コンバインなどの農業機械を使用する際の故障リスクも高まります。
つまり今回の被害は、「田んぼに水が入った」というだけの問題ではありません。
1年間の農作業の成果を収穫する直前に、商品となる米そのものと、収穫に使用する農業機械の双方が影響を受ける可能性があるのです。
コメ農家にとって非常に厳しいタイミングで発生した豪雨だったといえるでしょう。

30ヘクタールの田んぼの約3分の1が被害
邑知潟の南側でも深刻な浸水被害が発生しました。
この地域でコメを栽培する濱田栄治さんは、およそ30ヘクタールという広大な田んぼで米作りを行っています。
ところが今回の豪雨によって、その約3分の1にあたる田んぼで稲穂の先まで水につかりました。
田んぼにたまった水の深さは30~40センチほどに達したとされています。
被害額は1,200万円以上に上るとみられており、農家の経営に与える影響の大きさがうかがえます。
30ヘクタールの約3分の1とすると、単純計算では10ヘクタール前後に相当します。
もちろん、浸水した全ての米が直ちに収穫不能になるとは限りません。
一方で、稲穂まで水につかった場所では泥の付着などによって品質に影響が出る可能性があります。
また、田んぼへ流れ込んだ瓦礫などによって農業機械が故障する危険もあるため、安全に稲刈りできる状態なのかを確認する必要があります。
排水後の稲の状態や田んぼの状況によっては、収穫を断念せざるを得ない場所が出てくる可能性もあります。
「トキ認証米」にも豪雨被害
今回の羽咋市の豪雨被害でもう1つ注目されるのが、「トキ」と米作りとの関係です。
羽咋市は2026年5月、本州で初めてトキが放鳥された地域です。
濱田さんも、トキが暮らしやすい環境づくりを目指し、農薬や化学肥料を減らして栽培する「トキ認証米」を手がけています。
田んぼは単に米を生産する場所ではありません。
水田やその周辺には昆虫やカエルなど様々な生き物が暮らしており、トキが餌を探す環境としても重要な役割を担います。
濱田さんの田んぼには、放鳥されたトキが約2か月にわたって棲みついていたといいます。
ところが今回の浸水後、その姿は見られなくなったとされています。
豪雨による被害は、収穫を目前にした米だけではなく、トキと共生する農業を目指して取り組んできた農家にとっても大きな痛手となりました。
羽咋市で進められてきた「生き物と共生する米作り」という観点からも、今後の田んぼの復旧が注目されます。

落雷で米の乾燥機も使用不能に
農家を襲った災害は、記録的豪雨だけではありませんでした。
濱田さんの農場では、27日未明に発生した雷の影響で、米の乾燥機が使用できない状態になりました。
米作りでは、稲を刈り取れば作業が終わるわけではありません。
収穫したばかりの籾には多くの水分が含まれているため、適切な状態まで水分量を調整する乾燥工程が必要になります。
その重要な役割を担う乾燥機が落雷によって停止してしまったのです。
濱田さんは、使用できなくなった設備を別の機器で補いながら、何とか作業を続けようとしています。
しかし、
「田んぼが浸水して稲刈りが難しい」
という問題に加えて、
「収穫できても乾燥設備が十分に使えない」
という問題まで重なったことになります。
専業農家にとって農作物の収穫は、そのまま生活や収入に直結します。
濱田さんが「できる限りあるものは収穫したい」と語っていることからも、厳しい状況の中で少しでも被害を抑えようとする農家の切実な思いが伝わってきます。

田んぼが浸水すると米はどうなる?
大雨によって田んぼが浸水すると、「水が引けば普通に稲刈りできるのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、収穫期の田んぼが長時間浸水した場合には、様々な問題が生じる可能性があります。
まず心配されるのが、稲穂への泥や汚れの付着です。
稲穂まで完全に水につかると、排水された後にも泥などが残る場合があります。
また、大雨によって流木、石、枝、その他の瓦礫が田んぼへ流れ込む可能性もあります。
こうした異物が残った状態でコンバインを走らせれば、農業機械を傷める原因になりかねません。
さらに、地面が大量の水を含んだままだと、重い農業機械が田んぼへ入ること自体が難しくなる場合があります。
今回の羽咋市のように稲刈り直前の時期であれば、収穫可能な期間との兼ね合いも重要です。
そのため、田んぼから水が引いたとしても、
・稲の状態に問題はないか
・泥やがれきが残っていないか
・農業機械が安全に入れる状態か
・収穫した米の品質を確保できるか
・乾燥など収穫後の設備を使用できるか
といった点を確認する必要があります。
今回の記録的豪雨が羽咋市のコメ農家にどの程度の最終的な被害をもたらすのかは、排水後の田んぼや稲の状態によっても変わってくるでしょう。
よくある質問
Q1. 石川県の記録的豪雨でどこに農業被害が出ていますか?
報道では、石川県羽咋市の邑知潟周辺で深刻な田んぼの浸水が伝えられています。
特に邑知潟北側の千路町や鹿島路町では田んぼだけでなく農道も冠水し、28日に入ってからさらに水位が上昇しました。
邑知潟南側の田んぼでも稲穂まで水につかる被害が確認されています。
Q2. 羽咋市の田んぼの被害額はいくらですか?
濱田栄治さんが米を栽培する約30ヘクタールの田んぼでは、約3分の1で稲穂の先まで水につかり、被害額は1,200万円以上に上るとみられています。
ただし、これは報道で報じられた農家の被害額であり、羽咋市全体や石川県全体の農業被害総額を意味するものではありません。
Q3. 浸水した田んぼの米は収穫できますか?
浸水したからといって、全ての米が必ず収穫できなくなるわけではありません。
ただし、今回の被害では稲穂への泥の付着や、田んぼへ流れ込んだ瓦礫による農業機械の故障などが懸念されており、収穫できない可能性が高い場所もあるとされています。
実際に収穫できるかどうかは、浸水時間や稲の状態、排水後の田んぼの状況などによって異なります。
Q4. 「トキ認証米」とは何ですか?
今回被害を受けた農家では、トキが暮らしやすい環境を目指し、農薬や化学肥料を減らして作る「トキ認証米」が栽培されています。
羽咋市は2026年に本州で初めてトキが放鳥された場所でもあり、農業とトキとの共生を目指す取り組みが進められています。
Q5. 豪雨以外にもコメ農家への被害はありましたか?
はい。
報道によると、27日未明に発生した雷の影響によって、濱田さんの農場では米の水分量を調整する乾燥機が使用できなくなりました。
田んぼの浸水に加えて、収穫後に必要となる設備まで被害を受けたことで、農家は二重の苦境に立たされています。

まとめ
石川県を襲った記録的豪雨によって、羽咋市の邑知潟周辺では稲刈りを目前に控えた田んぼが広範囲にわたって浸水しました。
千路町や鹿島路町などでは田んぼや農道が冠水し、場所によっては稲穂すら見えないほど水位が上昇しています。
約30ヘクタールの田んぼで米を栽培する濱田栄治さんの場合、その約3分の1で稲穂の先まで水につかり、被害額は1,200万円以上に上るとみられています。
被害を受けた田んぼでは、トキとの共生を目指して農薬や化学肥料を減らした「トキ認証米」も栽培されていました。
さらに、落雷によって米の乾燥機が使用できなくなるという被害まで重なっています。
稲刈り直前の田んぼが浸水すれば、水が引いたとしても泥や瓦礫、農業機械への影響など、様々な問題が残ります。
何より農家にとっては、長い時間をかけて育ててきた米が「これから収穫」というタイミングで被害を受けたことが大きな打撃です。
排水ポンプによる復旧作業が進められていますが、実際にどれだけの稲を収穫できるのか、被害の全容が判明するまでには時間がかかる可能性があります。
できるだけ多くの稲が無事に収穫され、1日も早く田んぼと地域の農業が復旧することが望まれます。
※記事内の画像にはイメージが含まれています。

コメント